「エモい」話

「エモい」

さてみなさん、「エモい」ということばを知っていますか?
知っているし使う、使わないけど聞いたことある、知らんわそんなん、などいろいろかもしれません。
「エモい」は「感情的な」を表す英単語の「emotional(エモーショナル)」に、日本語の形容詞を表す「い」を付けた造語と一般に理解されており、ざっくりと「しみじみとする」「感動的だ」といったような意味合いで使われることが多いです(先日、渡邊先生も音楽を聴きながら「エモいな~」と連発していました)。TwitterなどのSNSで使われ始めたみたいです。

「エモい」ということばに対して

言語学を学んでいる私としては、このような表現を見逃してはいられません。
このような「乱れた日本語」を使うなんて言語道断……といいたいわけではなく。
「ことば」に対する態度としては、以下のようなものが考えられます。

 ① そのようなことば遣いは乱れて(間違って)いるので「正しい日本語」を使うべきだ。
 ② そのようなことば遣いは実際に生じており、ではどうして生じるのだろうか。

どうやら「言語学」というと、①の態度を想像する人も多いようですが、実際の言語学の態度は②に近いものです。もちろん、言語学をやっている人は日常で使われる「ことば」に対して敏感ではありますが、それは②の態度でことばを分析したいのであって、「正しい日本語に直せ」とはほぼ言わないと思います。
(余談ですが、言語学では「言語事象」という用語を使います。身の回りでことばが使われるのを、「言語事象が起こる」という風にとらえ、「なぜそれが起こるのか」を考えたいわけです。)

では、「エモい」はどのような背景で生じているのかを考えてみましょう。
前述の通り、「エモい」は「しみじみとする」「感動的だ」というような意味で用いられます。どこかで聞いたことような気がしませんか?
ここで登場するのが(なんと!)「古典文法これ一冊」(リングアカデミーで配布している古典文法のオリジナルテキスト)。36ページ「あはれなり」を参照してみてください。
「あはれなり」の意味の解説では、
 ①趣がある ②悲しい ③かわいそうだ ④かわいい
としてありますが、全体の意味としては「しみじみと心が動く」(すごくざっくりとした意味ですね)とまとめられます。
日本人は平安時代から「エモい」感情を表すことばを使っていたわけです。
もちろん「正しい日本語」でも(それこそ)「しみじみとする」「心が動かされる」などの表現を使うことはできますが、SNSと言ったカジュアルな場では大仰な感じがしますし、そのような場違い感から「自分が言い表したい感情」と「ことば」がずれている気がします。
そこで「エモい」が登場するわけです。言ってしまえば、「エモい」はSNSに生きる現代若者版「あはれなり」なのです。

残り半年「エモい」日々を。

さて、これで「あはれなり」の意味は覚えましたね!笑

私は(自分が言い表したい感情としっくりくるときに)「エモい」という言葉を使うのに抵抗はありません(なんでもかんでも「エモい」で済ませるのはもったいないと思いますが……笑)。

このように「なぜ?」と考えることはおもろいですし、考える力をつけてくれます。学問の面白さは、身近なさまざまなことに対して「なぜ?」を考えることから始まります。これからもそのようなものの見方を育てていってくださいね。

さぁ、夏休みも終わり、いよいよ受検も近づいてきます。
これからの半年ほどは、受検を通してさまざまなことを考え、悩んだり、楽しんだりすることと思います。端的に言えば、半年後に振り返ってみて、今までの人生で最も「エモい」半年間にすることができるはずです。
私たちも全力で支え、サポートするので、「最高にエモい半年間」を一緒に過ごしていきましょう!

リングアカデミー講師 坂上 菖一郎